おシズと云ふ女
何から書き始めたらいいかな。
とかく、おシズってオンナは、あまりにエピソードが多過ぎて、何から書くべきか。
そうだな。まず、おシズってのは、私のばぁちゃんだということ。
いつもは「ばぁちゃんは、まだ生きてる」って事にして、自分を誤魔化しているんだけど、今日は「ばぁちゃんは、もう生きてない」ってなんとなく気がついちゃってて、なんだか寂しくて、
「そうだ、ブログを書こう。」
という気持ちになったのです。
本当なら、「おシズの一生」を時系列に書いていくのが正しいんだろうけど、伝聞の断片の繰り返しの集合なので、そこを整理するだけでライフワークになってしまう。
おシズ本人でなく、「私の知るばぁちゃん」なので、ノンフィクションでもあり、フィクションでもある。そこは最初にご了承願いたい。
じゃあ、書いていこうかな。
私は牛乳が好きだ。幼い頃から好きだ。牛乳でここまで大きくなったと言っても過言ではない。おかげで今はコレステロール値が高めで、大好きな牛乳をなるべく我慢せざるを得ないのですが…。
牛乳パックって、子供の手には大きいじゃない。
冷蔵庫から出すと、結露で滑るじゃない。それに重い。
子供用のコップとは、大概小さく作られてる。
でも幼い私は、牛乳が大好きなもんだから、飲みたいんですよ。どこにあるか知ってる。開け方もマスターしたし、コップに注げば飲める事も知っている。
で、溢すよねー。手から1000mlの牛乳パックが滑り落ちるんだもの。そりゃぁもう、盛大に溢れましたよ。昔の家ですから、和室の畳敷きに、カーペットを敷いてるんですね。そこに盛大に牛乳が溢れて、みるみる染み込んでいく訳。
幼い私は縮み上がりましたよ。まず頭を過ぎったのは、
「ばぁちゃんに怒られる!!!」
という恐怖。
「地震、雷、火事、親父」なんて昔の人は言ったもんですが、当時の私にとって、恐いモノと言ったら、そりゃもう、「ばぁちゃん、ばぁちゃん、ばぁちゃん、ばぁちゃん!!!」だったのです。その怒号は雷の如く宙を引き裂き、大地は怒りに震え、怒髪天を突く如く怒り狂ったばぁちゃんのその姿は、火炎を携えた不動明王そのもの。
そして間も無くそのお不動様が、縮み上がった私と、カーペットに染み込んでいく牛乳を見つけるのです。泣くしかないでしょ。
カーペットを乱暴にゴシゴシと拭きながら、「臭くなっちゃうじゃないのよ!!」「牛乳の臭いは取れないんだよ!!」「アァーマァーマァー!!!」(コレは何かの真言かな?わかりませんが)と叫ぶばぁちゃん。泣く私。
ただ、それだけの事。
それが、幼い私とばぁちゃんの日常。
なんだかちょっと泣きそうになってきたので、今日はこれでおしまい。
おシズ先生の今後の活躍に、ご期待ください。